WSBK&鈴鹿八耐挑戦記 バネ&プリロードの選び方編
こんにちは。レース監督の加藤です。
今日はメカニックの城山君がリアバネの交換をどうやったら早くできるか?と言う事で、彼なり
にアイディアと色々トライし、要は手と頭を早く動かすと言う基本に立ち返り練習をしていまし
た。
そしてタイムトライアル競争となり、二人で熱い戦いを繰り広げた訳です。
そんな事も有り、今日は車体セッティングの基本、バネレート&プリロードの関係について書
いてみたいと思います。
レースの世界では基本的にまずサーキットでの走行でまず最初にやる事は、バイクのジオメ
トリーベースセッティングに対してバネレートの選定をする事になります。
良くサスペンションが旋回中何mm位を使用しているなど、レースの世界では共通語となって
いますが、ではメカニックはこの数字から何を考えているのでしょうか?
例えばRCUのバネレートが100Nでプリロードが10mmの時、鈴鹿の2コーナークリップで
RCUのストロークが25mmだとします。
分かりやすくする為に、リンク等々は無視しバネによる荷重のみの話としますが上記の時に
リアサス(リアタイヤ)が路面を押し付ける力は
プリロード荷重(100N×10mm)+リアサスストローク荷重(100N×25mm)=3500N・・・・A
で釣り合っている。これはどう言う事かと言うと、これ以上の荷重を掛けるとグリップアウトす
る。
すなわち、路面のグリップ力と考えることも出来ます。
例えば、この時ライダーがリアが低く曲がらないと判断した場合、リアサスペンションのみで考
えた場合以下の選択肢があります。
①プリロードを掛ける。(例えば10mm→14mm)
②バネレートを上げる。(例えば100N→110N)
上記2通りの場合、リアの高さにはどのような変化が出るのでしょうか?
①の場合、路面のグリップは変わらないこの場合変わらないのでAを用いて計算すると。
(100N×14mm)+(100N× X)=3500N となり、X=21mm
よって、このセッティングではリアストローク21mmで路面のグリップと釣り合う、すなわちセッ
ティング変更前よりもリアサスペンションで-4mm、シート高で4×約2倍なので8mm高くなります。
同様に②だと
(110N×10mm)+(110N× Y)=3500Nで Y=21.8mm
すなわちリアサスペンションで-3.2mm、シート高で約6.4mm高くなるのです。
では、どちらを選択するのか?は非常に難しい問題ですが、数字的な話をすると他のコーナ
ーで基準のレート100N、プリロード10mmでこのコーナー(仮に130Rとしましょうか)では、リ
アサスストロークが35mmだとするとします。
その場合
(100N×10mm)+(100N×35mm)=4500N・・・Bです。
では、この場合①の時は
(100N×14mm)+(100N× X)=4500N よって、X=31mm
②のセッティングだと
(110N×10mm)+(110N× Y)=4500N Y=30.9mm
です。
この様に、2コーナーだとセッティング選択の違いでシート高の差で1.6mmの違いがあります
が、130Rでは0.2mmの違いしかありません。逆にストロークの浅いコーナーでは、リアの高さ
の差が大きく出るでしょう。
また、高さだけでなく動きを見るとサスストロークが路面と釣り合っている時に、例えばギャッ
プの入力への追従を良くする為には、柔らかいバネを選択しておいた方が良いですし、スライ
ドコントロール性の良さを考えるならば、硬いバネを選択するべきでしょう。
この様な違いを認識した上で、ライダーのコメントとデータを照らし合わせて判断する力がチ
ーフメカニックには要求されます。
更には、単純にリア高さの調整はリアバネレートだけでなく、フロントバネレート、車高、ライダ
ー乗車位置等々でも調整できますし、判断についてはサスペンションの減衰仕様、リンク諸
元も加味しなければなりません。
そんな中で、メカニックは数ミリの調整をし、ライダーはその違いを感じ取って、十分の何秒を
を削っていく。すごい世界だと思いませんか?
皆さんも、サーキットでの作業を見ることがあればこんな事を考えているのだなーと、マシンを
見たときには、何の為に調整できるようになっているのか?を見て頂ければ、見る目が変わ
って更に興味がわくのではないでしょうか?
今日も、非常にマニアックな世界になってしまいすみません。
そんなあなたに問題です。
上記Aの条件からバネレートを90Nにしようと思います。姿勢は変えたくありません。(すなわ
ちサスストロークは同じ)
では、プリロードはいくつにしなければなりませんか?わかりますよね?
では、本日もお付き合い頂きありがとう御座いました。