WSBK&鈴鹿八耐挑戦記 スパークプラグ編
こんにちは。レース監督の加藤です。
いよいよ来週にASSENでのレースが迫って参りました。
3月の始めに船便で機材とスペアパーツを送り、昨日何とか無事に、車両とエンジンをエアー
にて発送できました。
ところが!アイスランドでの火山の噴火でヨーロッパの空港が閉鎖されているではないです
か!その中にはやはり「アムステルダム」もあり、既に前途多難が約束されたような物です。
しかし、レースも人生もそうそう思い通りには行かない物です。与えられた環境の中でベスト
を尽くす!みんなで力合わせて頑張ってきます。
さて今回は点火、特にスパークプラグについて書かせて頂きたいと思います。
皆さんも御存知のようにエンジンは、ガソリンを混ぜた空気をシリンダーにて圧縮し、スパー
クプラグにて点火します。それで得られた燃焼爆発圧力によって動力を得られます。
火花を飛ばす仕組みを簡単に言うとプラグの中心電極に約2万~3万ボルトと言う高電圧を
掛け接地電極でアースする事により、その中心電極と接地電極の間に火花を起こします。
プラグ各部の名称や、もっと詳しい説明は下記のページを見て頂くと良く分かると思います。
では、どうやって?2~3万ボルトもの高電圧を発生させているのか、わかりますか?
原理は皆さんも学校でならった「電磁誘導」です。
「電磁誘導」に関しては御自分で勉強して頂くとして、高電圧を発生させる部品はこれ!
見たことありますよね?
そうです。イグニッションコイルです。
昔(POPの時代)は4気筒の場合#1,#4用、#2,#3用でそれぞれ1個づつで、計2個でした。
最近のバイクに使用されているものはダイレクトイグニッションコイルと呼ばれ写真のように、
プラグキャップとイグニッションコイルが一体になっています。
この、ダイレクトイグニッションコイルの中には鉄芯にコイルがグルグルグルグル巻きにして
あり、ECUからの指令によって1次電圧を遮断する事により非常に大きな2次電圧を作り出す
のです。
そのようにして出来た、2~3万ボルトもの力を火花に変えるのがスパークプラグです。
上にも書きましたが、中心電極からの放電を接地電極がシリンダーヘッド、エンジンを介して
バッテリーマイナスにアースします。
皆さんは点火系トラブルの時、プラグをシリンダーヘッドから外した状態で火花の飛びを確認
したことありますか?この時、アースをうまく取らないとエンジンではなく、それを持っているい
る人にアースが落ちてしまうことがあります。非常に痛いので気をつけましょう!
話は逸れましたが、スパークプラグで重要なのは如何に中心電極から接地電極へすばやく、
大きな火花を飛ばすか?が重要だと言うことは容易に想像出来ますね。
では、ヨシムラレーサーではどんな物を使用しているのか?どんな形状なのか?気になりま
すよね。では、本邦初公開ヨシムラレーサー使用プラグを御紹介しましょう。
右が、ヨシムラがスプリントレースで使用しているDENSOイリジウムプラグ。
このイリジウムプラグの中心電極の細さ何と0.4mm!どうですか?すごいですよね。
このプラグは、燃費、トルク、更にはいわゆるドン付きの改善に非常に効果がありました。
またレース用に改造したエンジンの場合、GSX-Rの場合STDプラグは熱価27番位なのです
が、それとこのイリジウムレーシング(IU01-31*熱価31番)ですと、何と5~8馬力ぐらいの差が
あったのです。
こんなにも違う物なのか!と我々はエンジンに合わせた熱価の選び方や、燃焼室形状に対し
ての火花の位置等、エンジンチューニングの基本であるプラグの重要性を再確認したので
した。
自分が小さい頃、鈴鹿八耐で来日する外国チームのメカニックが、たびたびPOPにプラグの
焼けを見てもらいに来てました。今思えば素晴らしい光景でしたね。
そして左が、鈴鹿八耐で使用している球状沿面スリット入りプラグです。
鈴鹿八耐は世界で一番と言っても良い過酷なレース。ハイスピードと高燃費の両立が要求さ
れ、エンジン、車体、ライダー、スタッフ、すべての力が要求される舞台で共同開発されたスペ
シャル品です。
通常、耐久性を重要視した物はフラットな沿面プラグとなり、着火性と着火安定性が落ちてし
まいます。そんなイタチゴッコである問題を解決したのがこのスペシャルプラグ。
DENSOの新しいアイディアと技術が強力ににヨシムラをバックアップしています。
そもそも、DENSOさんとヨシムラの御付き合いは1976年アメリカで始まりました。
それから、34年経っても変わらずヨシムラを支えてくれています。
近年では八耐用点火マップを製作する時に機材を持ち込んで頂き、ノッキングの解析も行っ
てもらったり、弊社KITパーツであるインジェクションコントローラーEMproのプログラム作って
もらったりしています。
また、スズキGSX-Rには各種センサー、イグニッションコイル、ラジエターなど沢山のデンソー
製部品が使用してあり、私たちを支えています。
ここまで如何でしたでしょうか?
プラグの焼けを確認するのは基本中の基本。
皆さんおろそかにしていませんか?可能であれば、今後もWSBKでのプラグの焼け具合も公
開して皆さんの参考になれば、と考えております。
明日は、鈴鹿サーキットにて鈴鹿八耐参戦発表会がありますので、行ってきます。
では、ありがとう御座いました。