2010年WSBK&鈴鹿八耐挑戦記 エンジン ピストン&コンロッド編
こんにちわ。ヨシムラレース監督の加藤です。
いよいよ、ヨシムラの本年のレース活動第1戦目となる世界スーパーバイク選手権(WSBK)オランダASSEN大会が再来週(決勝4/25)と迫ってまいりました。
そこで、このヨシムラレースチームのWSBKへのチャレンジに際し、多くのファンの皆様にヨシムラの取り組みやマシン開発を見て頂き、皆さんにもこの世界戦に共に挑んでいるんだ!と言う気持ちを共感して頂けたら嬉しいです。
さて、第1回目となる今回はピストン&コンロッドについて御紹介させていただきます。
そもそも、昨年まで参戦していたJSBとWSBKではどんな違いがあるの?と言う皆様も多いかと思われます。
大きな違いは、JSBではシリンダーヘッド周りの改造とミッションの変更が可能です。例えばカムシャフトとバルブスプリング、ヘッドガスケットは交換OKです。また、ポート研磨と面研による圧縮比のアップは認められています。
JSBエンジンのチューニングで難しい所は、カムシャフトスペックと圧縮比及びロブセンターのバランスです。当然の事ながらカムシャフトはハイリフト化、作用角もSTDと比べると広がるわけですが、圧縮比も上げなくてはいけない、ロブセンターは目標の所に近づけたい、当然ピストンとバルブはぶつからない様にしなくてはいけないという事で、STDピストンを使用するいじょうは、すべてを理想(実験)値でと言うのは非常に難しいのです。現状把握も含め、この調整が各チーム腕の見せ所となる訳です。
それと比べるWSBKのレギュレーションでは、上記の変更はもちろんピストン、コンロッド、リング関係、メタルベアリング、更にシリンダーヘッドやクランクケースへの追加工も認められています。そう。WSBKレギュレーションではある程度理想の形を追求できるのです。
そこで、ヨシムラは今回ピストン&コンロッドを新作しました。
世界の7バイクメーカーのファクトリーマシンを相手にするのですから、基本的な考えとしては、もちろん高性能です。
ピストンです。鍛造素材からの総削りだしピストンです。
ピストン設計で重要な事は、ものすごい燃焼圧力がピストンに掛かった時に、どれだけピストンの変形を押さえられるか?で、それがいわゆるフリクションの低減に繋がるのです。したがってモノコック形状となっています。もちろん、材料も専用特殊材です。これで、STD約170gから-20g(12%減)の150g。
実は、JSBでは許されていなかった燃焼室形状も変更しています。ここは非常に性能に寄与する部分で、新しい発見の連続でした。
次にコンロッド。チタン製のH断面です。
こちらはSTD320gに対して、215g。105g減(33%減)です。設計上レースユースで1万キロを目標に製作されています。ボルトはSTDを使用します。
ピストン&コンロッドの設計、製作はケンマツウラレーシングサービスさんでお願いしました。
社長である松浦賢さんは、ヨシムラの卒業生で愛媛にて最先端レシプロ系部品の製作をしております。
ケンマツウラレーシング自体が昔、コスワースDFVなどでレース活動をされていて、その過程で特化したエンジン部品の製作をするようになりました。我々としてはエンジン屋さんが設計製作される部品は心強く、さらに加工に賭ける情熱は半端なく、加工温度を安定させる為に半地下に立てられた建物で製作される製品は芸術品です。
今回、ヨシムラのWSBKチャレンジに対し多大なる協力と、アドバイスをもらいました。ありがとうございました。
さて、マニアな方はもうお気づきかも知れませんが、ピストンがレースでは珍しい3本リング仕様となっております。また、コンロッドの耐久性は目標1万キロ。
基本的な考え方として高性能と歌いましたが、ヨシムラとして当たり前の事なのですがWSBK向けに開発するに当たり皆さんに提供できる形での物造りをコンセプトとしました。
よって、ピストンピン、ピストンリング、ピストンピンサークリップ又コンロッドベアリング、コンロッドボルトはSTDを流用しており、最新、最高峰のスペックではありますがレースパーツとしての市販化を目指しております。
これこそ自体がWSBKと言う大きな舞台に於いて、メーカーファクトリーチームとは違ったヨシムラらしいチャレンジでは無いか?と考えております。
また、これはメーカさんからの依頼ではなく、あくまでも我々の意識の部分ですが、スズキ市販車の先行開発的な役割を担う為、ヨシムラWSBKエンジンはSTDパーツを多く使用しており、良く出来たスズキGSX-R1000のそれらのSTD部品は現在ネを上げることなく、シッカリと機能しております。
そんなヨシムラ製WSBKエンジンの性能表です。
シッカリとJSBエンジンに比べてパワーアップしております。
実は、このエンジンを開発するに当たり性能的にはグリップが出るエンジンを私たちなりではありますが、目指して開発しました。
最大トルク及びトルク曲線、圧縮比、慣性マス等々、まずASSENに向けて仕様決めをしました。最大馬力やストレートスピードを狙ったもっと過激な?仕様もあるのですが、現状我々が考えるベストでASSENに望みます。
もちろんストレートが遅かったら悔しいので、スペアでフルスペックも持ち込みます。
WSBK挑戦記ピストン&コンロッド編如何でしたでしょうか。
かなりマニアックな感じとなりましたが、もっと知りたい方、書いてあることが難しくて分からない方はヨシムラツーリングブレイクタイムなどで、私に直接御質問ください。
では、次回乞うご期待。ありがとう御座いました。
いよいよ、ヨシムラの本年のレース活動第1戦目となる世界スーパーバイク選手権(WSBK)オランダASSEN大会が再来週(決勝4/25)と迫ってまいりました。
そこで、このヨシムラレースチームのWSBKへのチャレンジに際し、多くのファンの皆様にヨシムラの取り組みやマシン開発を見て頂き、皆さんにもこの世界戦に共に挑んでいるんだ!と言う気持ちを共感して頂けたら嬉しいです。
さて、第1回目となる今回はピストン&コンロッドについて御紹介させていただきます。
そもそも、昨年まで参戦していたJSBとWSBKではどんな違いがあるの?と言う皆様も多いかと思われます。
大きな違いは、JSBではシリンダーヘッド周りの改造とミッションの変更が可能です。例えばカムシャフトとバルブスプリング、ヘッドガスケットは交換OKです。また、ポート研磨と面研による圧縮比のアップは認められています。
JSBエンジンのチューニングで難しい所は、カムシャフトスペックと圧縮比及びロブセンターのバランスです。当然の事ながらカムシャフトはハイリフト化、作用角もSTDと比べると広がるわけですが、圧縮比も上げなくてはいけない、ロブセンターは目標の所に近づけたい、当然ピストンとバルブはぶつからない様にしなくてはいけないという事で、STDピストンを使用するいじょうは、すべてを理想(実験)値でと言うのは非常に難しいのです。現状把握も含め、この調整が各チーム腕の見せ所となる訳です。
それと比べるWSBKのレギュレーションでは、上記の変更はもちろんピストン、コンロッド、リング関係、メタルベアリング、更にシリンダーヘッドやクランクケースへの追加工も認められています。そう。WSBKレギュレーションではある程度理想の形を追求できるのです。
そこで、ヨシムラは今回ピストン&コンロッドを新作しました。
世界の7バイクメーカーのファクトリーマシンを相手にするのですから、基本的な考えとしては、もちろん高性能です。
ピストンです。鍛造素材からの総削りだしピストンです。
ピストン設計で重要な事は、ものすごい燃焼圧力がピストンに掛かった時に、どれだけピストンの変形を押さえられるか?で、それがいわゆるフリクションの低減に繋がるのです。したがってモノコック形状となっています。もちろん、材料も専用特殊材です。これで、STD約170gから-20g(12%減)の150g。
実は、JSBでは許されていなかった燃焼室形状も変更しています。ここは非常に性能に寄与する部分で、新しい発見の連続でした。
次にコンロッド。チタン製のH断面です。
こちらはSTD320gに対して、215g。105g減(33%減)です。設計上レースユースで1万キロを目標に製作されています。ボルトはSTDを使用します。
ピストン&コンロッドの設計、製作はケンマツウラレーシングサービスさんでお願いしました。
社長である松浦賢さんは、ヨシムラの卒業生で愛媛にて最先端レシプロ系部品の製作をしております。
ケンマツウラレーシング自体が昔、コスワースDFVなどでレース活動をされていて、その過程で特化したエンジン部品の製作をするようになりました。我々としてはエンジン屋さんが設計製作される部品は心強く、さらに加工に賭ける情熱は半端なく、加工温度を安定させる為に半地下に立てられた建物で製作される製品は芸術品です。
今回、ヨシムラのWSBKチャレンジに対し多大なる協力と、アドバイスをもらいました。ありがとうございました。
さて、マニアな方はもうお気づきかも知れませんが、ピストンがレースでは珍しい3本リング仕様となっております。また、コンロッドの耐久性は目標1万キロ。
基本的な考え方として高性能と歌いましたが、ヨシムラとして当たり前の事なのですがWSBK向けに開発するに当たり皆さんに提供できる形での物造りをコンセプトとしました。
よって、ピストンピン、ピストンリング、ピストンピンサークリップ又コンロッドベアリング、コンロッドボルトはSTDを流用しており、最新、最高峰のスペックではありますがレースパーツとしての市販化を目指しております。
これこそ自体がWSBKと言う大きな舞台に於いて、メーカーファクトリーチームとは違ったヨシムラらしいチャレンジでは無いか?と考えております。
また、これはメーカさんからの依頼ではなく、あくまでも我々の意識の部分ですが、スズキ市販車の先行開発的な役割を担う為、ヨシムラWSBKエンジンはSTDパーツを多く使用しており、良く出来たスズキGSX-R1000のそれらのSTD部品は現在ネを上げることなく、シッカリと機能しております。
そんなヨシムラ製WSBKエンジンの性能表です。
シッカリとJSBエンジンに比べてパワーアップしております。
実は、このエンジンを開発するに当たり性能的にはグリップが出るエンジンを私たちなりではありますが、目指して開発しました。
最大トルク及びトルク曲線、圧縮比、慣性マス等々、まずASSENに向けて仕様決めをしました。最大馬力やストレートスピードを狙ったもっと過激な?仕様もあるのですが、現状我々が考えるベストでASSENに望みます。
もちろんストレートが遅かったら悔しいので、スペアでフルスペックも持ち込みます。
WSBK挑戦記ピストン&コンロッド編如何でしたでしょうか。
かなりマニアックな感じとなりましたが、もっと知りたい方、書いてあることが難しくて分からない方はヨシムラツーリングブレイクタイムなどで、私に直接御質問ください。
では、次回乞うご期待。ありがとう御座いました。